平成30年4月のある夜。夕飯時で混み合う東京都内のスーパーで、会計待ちで並んでいた30代の男性客が空いたレジに移動しようとしたところ、通路に落ちていたカボチャの天ぷらを踏んで足を滑らせた。
買い物かごとかばんで両手がふさがっていた男性は右膝を打ち、靭帯(じんたい)損傷などで約5ヶ月間通院。店側は男性に見舞金として約6万円を支払ったが、男性は店側に慰謝料など140万円超の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。
裁判では、店側が通路の落下物による転倒事故を予測でき、従業員が安全確認をする義務があったかどうかが主な争点となった。
昨年12月の1審東京地裁判決では、買い物客自身が惣菜売り場で天ぷらをパックなどに詰め、レジまで運ぶ販売方法だったと指摘。「天ぷらがレジ前の通路に落下することは予見できた」と認定し、男性の過失もあったとした上で約57万円の賠償を店側に命じた。
なぜ、落下物に気づけなかったのか。店内の見回りや安全確認、清掃をしっかり行われていればこのような事故は起きなかったのではないか。人の出入りが多いことが予想されるスーパーで、いづれの場所でも転倒事故が起きる可能性があるにも関わらず転倒防止や安全確認などの対策の精度が、甘かったのではないかと考えられる。出入りした客が必ず通ると考えられるレジ付近の通路では、転倒事故が再発しないような対策を入念に実施していくことが必要と感じた。