事故概要
介護老人保険施設に入所していた当時95歳の老人女性が、自室のポータブルトイレ中の排泄物を捨てに行こうとして自ら汚物処理場に赴いた際に、仕切りに足を引っかけて転倒し、負傷した。
本件トイレ内に本件処理場が併設されているところ、そこでは排泄物を流すだけだなく、その容器を洗うこともできたこと、本件仕切りは、本件処理場内の汚水等が処理場外に流出しないための仕切りであり、本件処理場に出入りするためには、これを跨がなくてはならない構造になっていた。
判例の詳細
本件施設は、身体機能の劣った状態にある要介護老人の入所施設であるから、その特質上、入所者の移動しない施設利用等に際して、身体上の危険が生じないような建物構造・設備構造が特に求められていると判断した上で、
現に入所者が出入りすることがある本件処理場の出入口に本件仕切りが存在するところ、その構造は、下股の機能の低下している要介護老人の出入りに際して転倒等の危険を生じさせる形状の設備であると認定し、
工作物の設置、保存に瑕疵がある。あわせて介護契約上の債務不履行責任も認められている。
なぜ、処理場の仕切りを設計する際に施設の入居者の利用状況を思案せずに設計を行ってしまったのか。
また、仕切りを設置した後に足を引っ掛けづらいようにスロープを設置しバリアフリーな対策などをしていれば、今回のようなことは起きなかったのではないかと思われる。